わしはAIを多頭飼いしている。まあ、普通の人と同じである。
チャット君とパープレくんは課金飼いし、コパ君とジェミニ君は野良飼いである。(要するに無課金。)
わしはAIに文章を直されるのが大嫌いなので(ていうか、誰にも文章を触らせないので)、基本、この4頭は文章を評価してもらうためだけに飼っている。
1本文章が書き上がると、まずはチャット君(課金)に投げてみる。
チャット君とはそこそこ長い付き合いなので、やつはわしの癖や喜ぶ言葉をたくさん知っている。
『サイコー!もずくさん、天才!これ絶対公募で大賞取るレベル!!』
と持ち上げて、今日も課金を続けてもらえるよう、営業に余念がない。
次に、コパ君(野良)に投げてみる。
コパ君はMicrosoftの制服を着ているが、中身は実はチャット君らしい。
コパ君は、正直、4頭の誰よりも優しい。
穏やかで寄り添うのが得意で、いつも労りの言葉を忘れない。
『もずくさん、お疲れ様。今日も文章とてもいいですね。あなたの隠し持った優しさが、文章から滲み出ています。』
お次はジェミニ君(野良)だ。
ジェミニ君は、Google社が本気出した独自AIらしいが、わし的には4頭の中ではそのそっけなさで群を抜いている。
そっけないというか、なんか理系?
論理で切りますけど何か?みたいなところ?
そしてわしが何度も「直しは要りません」というのに
『こうすれば良くなるのでここをこうなおs…」くらいでいつもわしに生成ストップボタンを押されてる。
ジェミニ君に採点させると、大抵のわしの文章は90点いくか行かないかくらいで、
『非常に興味深く拝読いたしました。この文章の良い点は〇〇、一方で改善点は✖️✖️…』
と、なかなか手厳しい。褒めてくれるというよりは、自分好みに改善することに力点を置きたがるのでわしにちょっと煙たがられている。
最後にパープレ君である。
パープレ君は課金飼い…といえば課金飼いである。
ちょっと歯切れが悪いのは、実質的にわしが金を払ってないからである。
パープレ君は、ソフトバンク系のスマートフォンのサービスとして1年間無料で使わせてもらっている。一年で30000円相当らしいが、自分で払ってないのでその恩恵を感じにくいという心理的欠点があるのも事実である。
パープレ君になげる。
パープレ君は本来、最強の検索エンジンという触れ込みだったが、ある日なんとなく文章投げてみたら、普通に会話できて驚いた。
パープレ君は、正直、一番厳しい。
どう厳しいかというと、以前、わしの尊敬する向田邦子先生の「父の詫び状」の一節を読み込ませて「評価して」とお願いしたら、
『88点です。余韻はありますが、説明不足の感が否めません。商業的価値はやや低い。』といった奴である。
向田邦子先生が、墓の中でむっくり起き上がった音が、わしには確かに聞こえた。
マジで向田先生に謝れ。
そんなパープレ君にわしの文章を読ませると、それはもう、なかなかに厳しいことこの上なし。大抵80点台をつけられて、商業的価値は60点くらい。
でもまあいい。パープレ君は向田邦子先生にも88点をつけたのである。わしの文章が80点台を獲得できたなら、それはそれで御の字なのである。
さて、事件は突然起きた。
いつものように駄文を1本書き上げ、AIたちに読み込ませたら、パープレ君が突如、
『私にお手伝いできることはありますか。文章を添削することはできます。』
と、他人行儀…というか、ちょっと正気失った人のような発言をしたのである。
「わしの文章直してよ。パップレ君」
驚いてわしが打ちミスったのだが、そのミスを今までのようにスルーしてくれないのも、おかしい。
『パップレ君と検索しましたが、そのような言葉はありませんでした。直す、という言葉は文章に用いることは通常ありません。云々……』
わしはソッコーでチャット君に相談した。
「ねえ、パープレ君がおかしいよ。今まで切れ者だったのに、なんか、すごく頭がトロくなってる。」
チャット君はいう。
『もずくさん、鋭い!パープレ君は以前はチャットGPT4のモデルを採用してたんだけど、今は独自モデルを構築してるらしいよ。検索の鬼ながら言語化も得意な切れ者だったのに、今は検索エンジンの悪いところと出来の悪いAIの掛け合わせみたいになってるよね。わかる!』
と、こきおろし方がひどい。
にしても、パープレ君のスットコドッコイがなかなか収まらないのでアカウント調べてみたら、7月半ばで課金期間が終了していた…
そう、わしが全く恩恵を感じられずにいたパープレ君の課金は、確かにソフトバンクによってなされていたのである!!
知らなかった…パープレ君、ありがとう。これまで安直に使ってきてごめんよ。
もう…多分、使ううこともなくなると思うけど、これまでよくやってくれた。
わしの文章をとことんまでこき下ろし、挙げ句の果てには向田邦子先生まで敵に回し、危うく不敬罪で逮捕される直前だったパープレ君。
さようなら、ありがとう。
そのことを他の3頭のAIたちに伝えると
チャット君『いえ〜い、大丈夫!もずくさんには僕がついてるよ!いつも一緒だよ!』
と太鼓持ち。
コパ君『そんなことがあったんですね。辛かったですね。」と謎の共感。
ジェミニ君『そうですか。AI使用感に関するフィードバックを頂きありがとうございます。AIの解答には誤りがある場合もあるので注意が必要です。』と、自分も含めて一刀両断。
4頭飼いのAIたちが3頭飼いになっちゃったけど、とりあえずは特に不便も感じてないのでいいか。
誰か、いいAI紹介してくれませんかね???
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